2025/9/5
【伊住 禮次朗 & 南 忠政】

文化継承や創造に関わる方々をお招きして、お話を伺う特別企画「語らひ人」。
第12回のゲストは、NPO法人 和の学校の理事長、伊住禮次朗さん。
そして、株式会社 宮脇賣扇庵の代表取締役社長、南忠政さんです。
今回は、伊住さんの『和の学校』で実施したクラウドファンディングをご支援させて頂いた返礼品として、「和の学校文化祭」の、「京都の伝統産業探訪ツアー」にご招待され、
江戸時代から続く扇子販売の老舗、「宮脇賣扇庵」の扇子作り見学をさせて頂きました。

(左)近衞忠大、(中央)南忠政さん、(右)伊住禮次朗さん
伊住さんが理事長を務める「和の学校」は、“日本の伝統をやさしく、ふかく、おもしろく。”をコンセプトに、日本の伝統文化・伝統産業等に関する情報発信、普及事業、調査研究を行うNPO法人です。その活動は、子どもを対象とした自然体験や、伝統素材を再活用した創造活動などの体験学習の運営、さらに「桂坂野鳥遊園」の管理運営、月刊誌『味の手帖』での連載、コンサルティング事業など、多岐にわたります。
一方、南さんが代表取締役社長を務める『宮脇賣扇庵(ばいせんあん)』は、文政六年(1823年)からつづく、京扇子の老舗です。現在の屋号は、書画をたしなみ文人墨客とも交流の深かった三代目当主の時代、明治20年に日本画家・富岡鉄斎により、京の銘木「賣扇桜」にちなんで命名されました。
扇子作りは非常に奥が深く、扇骨作り、紙を折る作業、絵を描く作業、扇の骨をまとめる要(かなめ)作りなど、完成までにおよそ20段階以上もの工程を経ます。
そのため、一つの扇子の制作に、2〜3ヶ月を要するのだそうです。
伝統を守りつつ、現代のニーズに合わせてユニークな扇子作りにも挑戦する――。
いよいよ、宮脇賣扇庵の「貴重な伝統の技」見学のスタートです。

宮脇賣扇庵 京都本店
目次
1.扇作り工程見学「折り」
2.扇作り工程見学 2人目
3.宮脇賣扇庵 京都本店へ
4.宮脇賣扇庵の茶室へ移動
扇作り工程見学「折り」
南:こちらは、扇面(せんめん)を折る職人の前川さんです。
扇子の制作には、扇骨作り、扇面作り、絵付け、組み合わせなど、様々な工程があるのですが、ここでは扇子の扇面、つまり扇の形をした紙を折る工程を行います。

型紙に湿らせた紙を挟んで折る。
南:この紙は通常は乾いていますが、折る前に湿らせてフニャフニャに柔らかくするんです。それを型の紙で挟み、折っていきます。
伊住:型にあてながら、挟んでいくようなやり方なんですね。
南:そうですね。

型紙を外した紙
伊住:すごく綺麗。
南:今、折っていただいている扇は無地ですが、いつもやらせていただいてる裏千家のお家元の字が入ってる場合などは、文字がどの部分にくるかがある程度決められているんです。
ただ、湿らせていることで、少しずつ紙が伸縮し、ずれてしまうので、位置が丁度合うよう指で微調整しながら折っています。
伊住:お家元が絵にお言葉を添えられますよね。
(初釜などの席では、干支などに因んだ柄に家元が書を添えた扇を引き出物にする)
南:はい。山と谷があって、谷のところにちょうど字が入ると、出来上がった時にきれいに見えるんです。そこをできるだけずれないように調整する――その微妙な感覚は、まさに職人の技です。
伊住:なるほど。
近衞:この型紙はロウ紙ですか?
南:これは「しぶ(柿渋)」を何回も塗ってます。
近衞:この型紙はかなり古いですよね?

型紙を広げ光に照らす
前川:これはね、昔の紙です。型紙を割いてあいだに古い本からとった紙を入れて、その上から「しぶ」を塗っています。固い紙をあいだに挟まないと紙が弱ってしまうんです。
昔の紙は固いのでね。それを利用して補強しているんですよ。
近衞:なるほど。